日本薬剤疫学会の第24回学術総会が、宮城県仙台市の東北大学星陵会館にて2018年10月13日(土)、14日(日)の2日間に渡り開催されました。今回のメインテーマは「薬剤疫学研究の新たな方法論」であり、数多くの薬剤疫学研究の発表が行われていました。参加者はアカデミア、医療機関、規制当局、製薬企業および医療情報データベースの販売会社等、幅広く、異なる立場から活発なディスカッションが行われていました。

 観察研究の方法論については、傾向スコア(プロペンシティスコア)を用いた交絡因子の調整に関する発表が多く行われました。傾向スコア分析の基本的な解説から、操作変数法や二重ロバスト法、hdPS (high dimensional propensity score algorithm)、多重補完法との組み合わせなど、傾向スコア分析を発展させた手法について多くの発表が行われました。
 また、医療情報データベース研究から得られたアウトカムに対するバリデーション研究についてタスクフォースからの報告もありました。アウトカムとして設定した指標の信頼性を担保することの重要性を認識すると同時に、普段業務で用いることの多いレセプトデータベースの情報に対して、カルテ等の原資料に遡ってバリデーションを行うことが困難であることも改めて認識することができました。発表では、アウトカムバリデーションは陽性的中率と感度を算出して検討しておりましたが、どちらに重きを置くべきかについては産官の立場による見解の違いがあり、興味深いディスカッションが行われていました。
 その他、次世代医療基盤法に関する招待講演なども行われており、参加者が会場に入りきらないほどの盛況ぶりで、関心の高さが伺えました。

 今回の学術総会では、本学会初の試みとして、「観察研究データを用いた統計モデルによる交絡調整の実践」ならびに「患者報告アウトカム入門 ~がん支持療法領域を例に~」というワークショップが開催されておりました。交絡調整のワークショップでは参加者がSASまたはRといった統計ソフトを用いて、実際に手を動かしながらプログラミング方法について学ぶことができました。患者報告アウトカムのワークショップでは1グループ4人程度に分かれ、仮想臨床試験を題材にPRO (Patient- reported outcome) をどのように設定すべきかについてのディスカッションを行いました。ディスカッション開始時にはお互い遠慮しておりましたが、次第に積極的な発言が行われるようになり、様々な視点からディスカッションすることができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
 データベース研究のデザイン、方法論について業務と直結する最新の知見を得ることができ、大変実りのある学会参加となりました。
 (文責:KH/FM)